SEIWA | Leather Craft :: Fabric Dyeing Forum | 染色・レザークラフトフォーラム | 佐々木健友|TaketomoSasaki



なめしからデザイン、
縫製の現場まで
約20年聞き続けた生の声

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――そして転機が訪れたんですね。

 当時42歳頃でした。会社方針としてバッグメーカーとの取引拡大に注力することが決定し、私はバッグメーカーさんの新規開拓を推進する部署に異動になったんです。浅草橋界隈にはOEMを請け負ってバッグをつくるメーカーがたくさんあります。飛び込みでいろいろなバッグメーカーに行くようになりました。そういう業務経験が独立への転機になりました。

 ある老舗メーカーではOEMだけでなく自社ブランドを立ち上げたり、20〜30人位の小さいメーカーが独自に面白い取り組みをしたりと、そういったメーカーさんと仕事をするうちに、バッグのデザインが面白いと感じました。

 いろいろなメーカーで多種多様なデザインを見ることができたんです。また色やコシ・ハリなど、メーカーから要望を受けて革をさがしたり、提案したりもしました。ちょうど2000年前後の頃です。その頃イタリアのミネルバとかが、ある問屋さんを通じて日本にどんどん入ってきたんです。今使っている革は取引先から教えてもらいました。

 初めて見て触れたときは衝撃でした。今まで靴メーカーさんに対し、綺麗で味があると思って卸していた革とは、もう全然雰囲気が違う。最初に「何これ?」っていう感触を覚えましたね。バッグの企画開発で最初につかう革を決定する打ち合わせは、企画の方々と行います。企画の人と話をするうちに「外国の小さいブランドだけど、お店に面白い製品がたくさんあるよ」と教えてもらったり、「今度違う革を使うから見て欲しい」と依頼されたりと色々なやりとりをしたわけです。そういう経緯を経ていくうちに、バッグの「デザイン」がどんどん面白くなりました。本当にいい環境にいたな、と思います。

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 バッグメーカーの企画の人とたくさん話ができた経験はかけがえのないものです。年中新しいバッグのカタチを求め、デザイン画をひたすら描いていたり、MR(マーケット・リサーチ)に明け暮れたりしている人たちです。そして本当にいろいろなモノを見て触っている人たちだったので、その人から「こんな革が欲しい」とリクエストされ、その説明を受ける中で、これまで知らなかったブランドをいくつも見て知ることができました。革の種類もたくさん見させてもらいました。質や味で細かなリクエストをもらい、私としては要望に応えることが仕事でしたので、姫路のタンナーさんのところに言って依頼したり、革のできるまでを見せてもらったりと、そこでもまた勉強させてもらいました。

 革問屋で過ごした約20年間を通し、私はその間を3つのステージに分けられると思います。入社から5,6年間は衣料品メーカーを中心にカタログ片手に決まった商品を卸していた時期、その後の6年間ほどは靴メーカーが中心になり、革の味や強度についてのリクエストを多くいただき、姫路まで行ってそれが実現可能か交渉したり、革の製造工程を勉強させてもらった時期、そして残りの6年間は靴からバッグメーカーに移り、企画の人たちに会い、モノをデザインする現場の空気に触れることができた時期です。営業をしていたおかげでいろいろな立場、仕事をしている人たちの声を生で聞くことができたのは今に役立っています。それぞれを見て経験できたのは、本当に体系的に知識を深められたと思います。それは教室を運営していても感じます。


――革も製品や市場が異なれば、当然要求も変わりますよね。よく分かりました。それで革問屋さんををご退職され独立されたと。

 これまで趣味として継続してきたレザークラフトですが、会社を辞めたこともあり、よくも悪くも時間ができました。そこでこれまでずっといろいろな立場の人から聞いた知識、技術の蓄積を整理したいと思ったんです。そこでレザークラフトの教室に通い、これまで培った技術を確かめました。
 
 これまでメーカーの職人に教えてもらっていましたが、メーカーはほぼ100%ミシンで仕立てています。もちろん手縫いもやろうと思えばやりますが、仕事はミシンで行なう人たちでした。そういう人たちから断片的に情報を得て取り組んでいたので、言ってみれば手縫いの基礎中の基礎が私の中になかったんです。独学でやっていたものばかりだったので、レザークラフトの教室では、その基礎を再確認させてもらいました。

 型紙の考え方や仕立て方は職人さんから教えてもらったこともあり、すでにある程度身についていました。教室に通いだして最初の3ヵ月は手縫いの基礎を学びました。目からウロコが落ちる体験も多かったですね。ひと通り道具の仕立てや手縫いの方法、コバの磨き方といったところを学びました。都合1年程度通いましたね。


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――そして教室を開くんですね。

 じつははじめから強く独立を希望していたわけではなかったんです。ですが、皮革業界に長く携わってきた経験を活かしたいと思い、レザークラフトの教室をはじめたんです。当初教室はよその革材料屋さんのスペースを借りてはじめました。開始当初は2、3人座ると一杯になってしまうほどのスペースで、生徒さんは一人しかいませんでした。

 はじめてみると、先生という立場でありながら逆に生徒さんから教えられることのほうが多かったです。生徒さんの要望に応え、こう言えばわかりやすいんだと気づくことも多々ありました。生徒さんが次第に増えて要望が多様化していくと、当然月謝をいただいてお教えするという立場に対する責任感も増していくんです。このままではマズイぞという気持ちのほうが強く、私なりに要望に応えるための勉強もしましたね。

 生徒さんから「こんなカタチのものをつくりたい」と言われ、それが私にとって未経験であろうが、とにかくチャレンジする感じでした。次回生徒さんに教えられるくらいまで、勉強と試作を重ねたり、知り合いの職人さんに教えてもらったりしました。





――生徒さんからみたら、当然先生という目線で見られますよね。

 先生だからという理由の前に、つくったことのないものにチャレンジすることが、私自身面白かったからという理由が大きかったこともあります。あとは生徒さんの希望するカタチに仕上がったときの嬉しそうな顔を見ているのがとても嬉しかった。「これはつくったことないんだよね」と言って挑戦すらしない、ということは絶対にしないようにしてきました。何とかしてカタチにしてあげたいという気持ちです。今にして思えば、なんであんなにムキになっていたのか、自分でも不思議です。たぶん、生徒さんといっしょにチャレンジするというコト自体が楽しくて仕方なかったんだと思います。

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 教室はその後革材料屋さんから移転し、近隣のバッグ屋さんの2階スペースを借りました。より広くなり、生徒さんも徐々に増えて30人位きていただくようになり、ある程度軌道に乗ったという手応えを感じました。移転は2011年の11月頃でした。そして今の場所に2013年夏に移転し、工房兼教室として運営しています。


――技術向上のために、心がけていることは?

 1回つくっただけで完成としてしまわないことですね。何個も試作して、手直ししていくことです。たとえばスライサーなどで試作し、本番で革でつくって完成という作り方は普通に行われていることですが、私の場合、それを自分でつかってみます。小物はわざと手荒く雑に扱ったり、バッグなら荷物を入るだけ詰め込んでみたりと使用感を試します。そうして使ううちに出てくる不満点や見つかった欠点の修正を常に行っています。どこが擦れやすいかといった確認です。手紐も数ミリ幅が異なれば持った時の感触や肩がけした時の重量感が異なります。デザインも大切ですが、仕立てた後の使い勝手はそれより重要です。あんまり改良ばかりしているといつまでたっても品物にならないんですが(笑)。

 概して構造をあまり複雑にしてしまうと、強度が足りなくなることが多いです。修理も大変ですし。なるべくシンプルにピタッと仕立て上がるように意識しながら修正を心がけています。

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 後は月なみですが、数多くこなすことですね。つくるほど、手が作業を覚えて慣れてきます。ただし「お仕事」として慣れてしまわないことを心がけています。どうしても数多くつくって慣れてきて、いつもやっているお仕事という感覚になってしまうと疎かになる工程が出てしまいがちです。一目ずつきちんと、手間を惜しまず工程を積み重ねていくことが肝要です。

 手縫いはミシンのスピードにはかなわないんですから、早くやることより、きちんとつくるほうに意識を傾けるようにしています。キチッと仕立てた革小物・バッグは、そうでない品物とくらべて佇まいや雰囲気が違います。手抜きをせずに数をこなすということ。近道はありません。


――gigiとして、今後の展望をお教えください。

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 教室に関しては、生徒さんの作りたいものを実現するためにあるというスタンスをこれまでとってきました。これは今後も変えることはありません。お教えできる人数に制限もありますが、もっと多くの生徒さんにお会いしたいです。そして教室と並行して、gigiのバッグのラインアップを充実させたい。gigiがバッグのブランドとして、少しずつ認知していただけるようになっていきたいですね。


――ありがとうございました。


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インタビュー=SEIWA 岡田和也



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