シンプルで、
革のよさが
そのまま現れるような
モノをつくりたい。

Profile
ささき・たけとも(革作家)
gigi-fabbrica(ジジ・ファブリカ)主宰。2009年設立。デザインから一貫制作したオリジナル革小物の販売およびレザークラフトスクールを運営。
約20年間皮革卸会社でバッグ、小物、靴のメーカーを担当し、そこで出会った職人さんたちに啓発され、趣味でバッグ作りをはじめる。皮革専門として培った経験とシンプルで美しいラインを描く型紙には定評があり、粋な遊び心を革で表現するユニセックスバッグのスペシャリスト。イタリアンレザーをつかった高品位な革小物も多数発表。
2013年、東京都台東区浅草橋に同ブランド名を冠した教室兼アトリエを構えスタート。
岡田(SEIWA企画部、以下略)
――gigi-fabbrica(ジジ・ファブリカ、以下「gigi」)としての活動をお教えください。
佐々木健友 氏(以下敬称略)
gigiは、もともと教室名称としてつけました。現在もメインは教室運営です。そこからgigiの名を冠した革小物の販売を開始しました。革小物の販売は、教室運営から派生した展開です。オリジナルの革小物は、インターネットや東急ハンズさんをはじめとした小売店で販売していただいています。今は小物が中心ですが、新しくバッグも増やしていきたいと考えています。これから本腰を入れていきたいですね。
ブランドとしては、主にイタリアンレザーを好んで使っています。現在gigiはバッグなどよりも革小物のほうが多いのですが、それは革小物のほうが革の発色のよさを特徴とした商品がつくりやすいからです。バッグであまりに派手な色使いをしてしまうと、持つ人を選んでしまうことになりがちだからです。
革の色合いは実物を手にとっていただくと、革の質感と相まって透明感のある発色を感じていただけるのか、インターネットに載せているサンプル写真以上に好評ですね。特に女性のお客さんから好評です。販売サイトに感想のコメントをいただくこともあります。
――今まで最も反響のあったデザイン、もしくは人気商品はなんですか?
好評をいただいているものは「iphoneケース」と「マリモ」という名前の小さなコインケースです。マリモはコロンとした可愛らしいフォルムが特徴で、箱マチと内縫いを組み合わせて仕立てました。すべてイタリアンレザーを使っていますので、使うほどに経年変化も楽しんでいただけます。以前インターネットサイトで2コセットをご購入いただいたご夫婦が、実物を手にとり気に入ってくださり、今度は彼らのご両親へのプレゼントとして、もう2コ追加注文をいただいたんです。とっても嬉しいコメントをくださったので、よく覚えています。
また東京・渋谷の東急ハンズにも同商品を販売いただいていますが、この2商品はいずれも好評をいただいています。色数も12色ほどご用意していますので、ぜひご覧ください。インターネットサイトは「iich(イイチ)」と「creema(クリーマ)」の2つをご利用いただけます。
革に関しては、私自身皮革業界で革問屋に長く身を置いてきましたので、革としていいモノを探すという方向に自然と視線が向きます。素材に味付けをするというより新鮮な革をそのまま使うという感覚です。例えると「お刺し身」をお客さんにお出しするという感覚です。綺麗に切って、盛りつけて、素材のよさをそのまま味わって欲しい。寿司屋の職人さんのようなつもりです(笑)。
つまり、シンプルで革のよさがそのまま現れるような製品をつくりだすことが、私のテーマです。余計な装飾は必要ない。サイズ感やフォルムといった使い勝手に優れた、長く愛用できる革小物をつくること。バッグならさらに「軽さ」と「強度」が重要です。
――デザインのモチーフや普段街で見かけるもので参考にしたり、注目したりしているものはありますか?
バッグですと常に数多くのものを見て、触れるように心がけていますね。お店で見る中からヒントをもらうこともありますが、一番参考になるのは街中を歩いている人のバッグです。つまりどのようなバッグを持っているかを見ることです。
たとえば電車の中で、目の前に座った女性がどんな色・カタチのバッグを持っているか、いいモノをお持ちだったりすると女性よりバッグばかりじっと見ちゃいますね(笑)。
お店に並んでいるバッグより、買われて日常の中でつかっている人の景色を意識的に見ています。それこそ、詰め込めるだけ詰めてボコボコに膨らんでいるバッグを担いでいる人やスッキリと颯爽と持つ人もいます。使い手の雰囲気とバッグが発する雰囲気が合っていると特にじっくり見てしまいますね。
また私は映画が好きで、特に30年代から50年代のアメリカ、いわゆる古き良き時代の描かれている映画をよく観ます。
イメージとしてはアル・カポネが闊歩していた時代の話を思い浮かべてもらうと早いかもしれません。劇中で描かれる風景は、男性は皆スーツに帽子をかぶっていた時代です。
当時、バッグは本当に高級品でしたし、手縫いのダレスやボストンも普通に使われている風景として描かれています。映画の小物としてバッグが出てくると、じっと見てしまいます。翻って自分のつくるものがその風景の中に置かれたとき、違和感なく溶け込むことができたら理想ですね。
――特に心に残っている映画はありますか?
近年ですと、1999年に公開された「ギター弾きの恋」という映画です。ジャズ・ミュージシャンであるジャンゴ・ラインハルトというギタリストをモチーフに、エメット・レイという架空の人物のライフ・ストーリーが描かれています。ウディ・アレン監督の映画ですから、結局は男女のグチャグチャとした人間模様が描かれるのですが、劇中の風景としてグレート・ギャツビーの時代のようなファッションにボストンやトランクを持った紳士が登場するんです。あとはパーティーシーンで小さなパーティバッグを持っていたりと、小物に着目すると注目どころ目白押しの映画です。
私は単に古いものをありがたがって復刻させたいと言っているのではないんです。当時は本当にお金をかけて仕立てられた高級品であり、皆大切に持っていたんですね。それが当然の時代だった。
――ちょうど工業化が進展し、モノの大量生産に移行する直前、あるいは過渡期にあたる時代ですね。
そうです。当時はすべてのモノに手作り感があった時代だったと思うんですね。すべてに人の手が入っていることを感じられるというか、小物1つひとつが見ていて面白いです。
――gigiの革小物はすべて佐々木さんお一人でつくっているのですか?
そうです。デザインから制作、販売まですべてやっています。ここの工房を制作の拠点に、インターネット販売や展示会への出品活動等を行っています。
- 1佐々木健友|Taketomo Sasaki
- 2私にとって革は「風合い」や「味」が最も重要
- 3なめしからデザイン、縫製の現場まで約20年聞き続けた生の声