「つくる選択肢も
あるんだよ」
と広く伝えていきたい。
――新しいキットづくりで心掛けたことは?
とにかく普通のキットとは違う感じにしたかった。まずつくって楽しいこと。
今の人たちは例えばカバンなど欲しいものがあっても「買う」という選択肢しかないじゃないですか。昔の人たちはそこに「つくる」という選択肢も当たり前に並んでいたと思うんです。お母さんが子供になにかつくってあげるみたいな。そういった意味で今と昔は大きく違うように感じています。
私は学生の頃から自分の手でものをつくってきたので「もっとみんなやればいいのにな」って常々思ってたんです。だから、わたしはものづくりをとおして「つくる選択肢もあるんだよ」と広く伝えていきたい。あとは独特なパーツのかたちで「組み立てる楽しさ」にも気付いてほしいと思っています。これがヒトビトの新たな発見や体験となるまでがわたしのデザインワーク。そう思っています。
それと自分でせっかくつくってもらうんだから、革は良いものを提供したい。いい素材を提供することで、モノのよさやカタチのよさがより理解してもらえるようになるのではないかな? とも思ってるんです。そして自分の目でよいものを選び取っていってほしい。日本にはいいものがたくさんありますから。
――ブランドネームに込めた意味は?
日本語を文字ったモノがいいかなとは思っていたんですね。それと「つくる(TSUKURU)。」というキーワードが以前からあって。で逆さにしてみたら「ウルクスト(URUKUST)」でなんかいいなと。
建築やインテリアデザインなどでドイツ・チェコなど東欧の雰囲気が好きで、それっぽい響きだったのと、最後の「ST」が「○○ニスト、○○する人」に聞こえて気に入り、これに決めました。
最初、ロゴはレザークラフトの道具にしようと思っていたのですが、自分の両手がないと何もできないし手が1番の道具だなと思ったので「自分の両手」を表すことにしました。
――土平さんにとって革の魅力は?
革素材はシャープなデザインをつくるのに向いていると思っています。部分的に言うとコバ(切り口)ですかね。この切り口は革にしかだせないと思っていて、切りっぱなしで使えるのもいいですよね。紙や生地では代用がきかない、これは革にしか出来ないと思うんです。
他にも使い込んだ味とか手触りのぬくもりのよさなどももちろんありますが、なによりも切り口のシャープさ、切りっぱなしで成型できることが魅力です。なのでコバ磨きにはこだわっています。
――デザインのインスピレーションはどこから?
建築と家具です。とくに家具ですかね? 昭和初期の建物が好きでちょっとしたディティール、たとえば扉の丁番やカタチがどう収まっているかなど小さい範囲が気になります。
バウハウス(*1)の考え方なども好きです。その年代の日本の建築や家具も好きです。この時代はデザインの草創期で装飾的なものを排除したカタチの美しさに迫るパワーがあり、まだ手づくり感や暖かみが残っている点もよいです。これらはわたしにとってとても影響が大きいですね。
――土平さんのデザインはいろんな分野と結びついているんですね?
基本的に私はデザイナーだと思っていて、デザインの素材に革を選んだというところがあります。
――今、興味のあることは?
やっぱり建物を見にいくのが好きですね(笑)。
先日、大阪でワークショップを開催したのですが、それを機会に、フランク・ロイド・ライト(*2)が設計した日本で唯一残っている住宅が兵庫の芦屋にあり見にいってきました。写真をいっぱい撮って記録したりもします。見るところはやはりディティールで、建築も制約が多いのでどうデザインとして空間が収められているかをつい見てしまいます。
――現状のレザークラフト業界をどう見ていますか?
レザー関連の本の話をするとデザインがいいなと思うものが少ないかもしれません。
あとは、女性目線でいうと簡単につくれるものが多いので、もっとプロユースなものがあるといいですね。キャッチーなモノが多いのかな? カタチももっと色んなものがあったら嬉しいです。どうしてもデザイナー目線で見てしまうのかな?
――今後の展望について
レザークラフトや革の良さ、つくる楽しさをもっと広めたいです。もっと面白い構造(型紙)やデザインにこだわって、レザークラフトの新たな魅力を伝えていきたいです。
それと、革素材をプロダクトとして落とし込んでいる人は少ないように思うので、革のデザイナーであることをアピールしていきたいですね。
――ありがとうございました。
インタビュー=SEIWA企画部 岡田和也
(*1)
バウハウス(Bauhaus)1919年、ドイツ・ヴァイマルに設立された、工芸・写真・デザインを含む美術と建築の学校。
(*2)
フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright、1867年6月8日 - 1959年4月9日)アメリカの建築家。
【Shop Information】
.URUKUST (ウルクスト)
〒224-0042
神奈川県横浜市都筑区大熊町219
Tel. 045-620-5080
※2014年3月、台東デザイナーズビレッジより移転、新工房を立ち上げました。
※お問合せの際は、電話番号の間違いにご注意ください。
http://www.urukust.com
- 1土平恭栄|Yasue Tsuchihira
- 2「つくる選択肢もあるんだよ」と広く伝えていきたい。