指導の姿勢
■指導の姿勢
教室は初代社長とのお約束通り、職人としてのスタンスで教えてほしい、という姿勢を貫いています。そして私が修行していた当時に、一番やりたかったことをやってもらっています。それは生徒さんの「つくりたい」という気持ちに応えるということです。
桜を描きたい人に、違う絵を指示することはしません。こういうことをしてはいけない、ということを言ったことは、この教室では一度もありません。また絶対に力をつけさせるというおもいで、ダメなときは叱ったりもします。そして、生徒さんには友禅の制作過程をゼロから全部やってみなさい、という姿勢でお教えしています。
ここで教わった技術は、あなたのものとして、どこに行っても使えるものです。一人でも制作活動を継続していただけるように、ということです。
■生徒さんについて
生徒さんは皆長い間続けている方ばかりで、それぞれ力をつけています。毎年新年会を行い、そこに去年つくった着物を着て来られるのですが、皆さんいいモノをつくっていますよ。自分が着たい、つくりたいとおもったものを1年かけてつくっているから満足度も高いでしょう。生徒さんからは「あの時先生に怒られたけど、頑張ってよかった」とおもっていただいています(笑)。
一生懸命やれば、それなりのものができあがりますし、面倒くさいとおもえばそういうものができあがります。全部の過程に自分の気持ちの入ったものできあがりますし、それは非常に正直なものです。上手にやろうとおもわず、丁寧につくる心がけを持とう、とお教えしています。
■基本の大切さ
教室では制作の土台となる基本をしっかりマスターしてもらい、そこから先はつくりたいものに合わせてアドバイスをしています。図案も自分の手で制作してもらっています。一番大切な設計図を先生である私が書いてしまっては、自分のものになりません。生徒さんを育てると考えたら、一からやってみなさいとお教えしています。
つくるものは着物でなくても、マフラーでも洋服でもなんでもいいでしょう。でき上がったものは、生徒さんの完全なオリジナルです。どうしてそれをつくろうとおもったのか、どうしてその方法でつくろうとしたのかという考えを聞くことで、制作手順を考えたり、私の経験から制作過程を最適化してアドバイスすることができます。答えをはじめから出してしまうのではなく、自主性と個性を大切にしています。
そして自分でつくった図案をもとに制作すると、それぞれ本来の意味での個性が出ます。それぞれ違うものができ上がり、つくり手の個性が出ます。それが味です。その個性を伸ばしてあげるのが、私の仕事かなと考えています。
■ものづくりに対する考え
ものをつくるという世界は、ちょっと今の世情とかけ離れているところがあるかもしれませんね。今は何かと便利ですが、その便利さには欠点もあります。それは便利に手に入れた知識は、一時的に頭に入っても、とどまって行かないということです。その時限りの知識だということです。
そこへ行くと、自分の手を動かして失敗を重ねた過程では、うまくいかないことを一人で苦しむ時間です。これは初心者に限ったことではなく、私どもプロでも同じです。その苦しみをたくさんした人ほど、よい物ができるようになっていくとおもいます。
■教室の雰囲気
教室の開催は月2回というペースで、機会としては少ないので、その時間を有効に濃密に過ごしていただきたいと考えています。レベルとしては、いわゆる手工芸として単なる趣味にとどまるのではなく、もう少し高いところを目指しています。SEIWAの生徒はすごいな、とおもわれるようにしていかなければならないですね。
■メッセージ
教室はまずつくりたいものをつくってくださいという教え方です。ただしそれをするためには、基本がなくてはいけません。基本だけはしっかりマスターしてくださいね、ということです。時間のある方には宿題も出します。ご自宅でも作業をすることで、染めに対して慣れることもできますし、ご自分の時間で工夫を重ねることで上手になれます。
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