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ローケツ染め と のり染めの魅力

■ローケツ染めとのり染めの魅力

 ローケツ染めは、本来プロセスがとても複雑です。初心者の方にはその複雑さに直面することなく、まずは形にする体験をしていただき、完成したときにそのプロセスが持つ意味が分かるといった体験をしていただきます。そのため、制作中は自分がどのプロセスにいるのかわからなくなることもあります。そして最終的に仕上がったときに、そのプロセスの意味を知り、こんなのができたと思えることが制作の楽しみのひとつですね。

 また、私の行なっているのり染めは、濃く溶いた染料の中にのりを入れて絵の具状にしたものを油絵のように描いていくという技法です。

 これは「色糊」という方法で、絵の具状にして描いていく方法を私自身が面白いと思い、取り組んでみたらわりとよい作品ができたので皆さんにもオススメしています。ここでの楽しさは、色をつかうということでしょうね。お絵描きができるような楽しさがあると思います。

 ローケツ染めの方は色をつかう楽しさもありますが、プロセスを一からずっと重ねて完成するというもので、のり染めはそのときの感覚で描き進んでいくというものです。のり染めはすぐ結果が出る方法ですね。


■教室をとおしてお伝えしたいこと

 染色をはじめたときは、まさか人様にお教えするなんて思っていませんでした。講師の機会をいただいたときは、何を伝えられるか考えたものです。

 たとえば、これまできちんと観察したことのなかったものでも、デッサンの機会があるとあらためてじっくり見ることになります。その「じっくり見て、考える」体験がモノの見方を変え、観察眼が磨かれます。

 モノの見方が変わってくると、自然と目に飛び込んでくるものを観察しながら見るようになっていきます。それが発展していくと、日常生活そのものが大きく変わっていきます。

 その変化は染めに限らず、モノづくりに携わっていないと決してわからない感覚でしょうね。あらためてモチーフをよく見ると、見慣れたものでも新たな発見があったりします。その積み重ねで感性が磨かれます。

 色も同じで、デザインを始めてから、お店のウインドウを見たり、電車の中吊りを見たりして、色の組み合わせにハッとする瞬間があります。

 教室でなにをお伝えできるだろうと考えた結果、染色の技術はもちろん、そういった体験をとおすことで、生徒さんの日常生活が変わっていくことを伝えたいと思いました。私自身が染色を通じてモノの見方やスケッチの仕方が変わり、そして生活が変わって行きましたので、この体験をぜひ共有していきたいですね。


■個性を表現するとは?

 スケッチやデッサンをするときは、ものをよく観察します。この観察時にすでに個性が現れてきていると思います。

 例えばリンゴひとつスケッチするにしても、皆それぞれ、ぱっと見でリンゴだと分かるものを描きますが、見ている部分はそれぞれ違います。

 もしかしたら、ある人はリンゴのおしりのほうを見ていて、ひっくり返したらこんな形だったと思ったり、ある人はリンゴの表面の柄をよく見ていて、リンゴの柄に新たな発見があったりといった具合です。そうなると、見る過程ですでに個性が表れています。

 当たり前のように全体を見る人と、部分を見る人がいます。その個性を形にしていくとなると、それなりの訓練が必要になってきます。やっぱり観察してモノを理解して、そこに自分の感情移入が起こります。そうして同じリンゴをデザイン化すると、その人なりのリンゴの形になります。

 表現のためのテクニックを習得していく過程は時間がかかっても、それぞれの個性はすでに観察時にでてきます。そうして個性を大切にしていくと、あるとき、これまでは使わなかったような色がでてくるといったブレイクスルーが起こります。それを目の当たりにすると、私自身も勉強になりますね。

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2019年夏期講習作品/ローケツ染額「秋の音」

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