手縫いとミシン
■教室の進め方
わからないことはどんどん質問してください。生徒さんのつくりたいものあっての教室だとおもっていますので、早く技術を身につけていただいて、少しずつ未経験の技術を盛り込みながら、いいモノをつくっていただきたいですね。
革の縫製には、大別して手縫いとミシンがあります。私自身、手縫い専門でここまで来たわけではなく、むしろミシンを多用した作品をつくって来ましたので、手縫いは後から習得しました(笑)。
手縫いからスタートした人は、手縫いであるがゆえに漉きやミシンという応用的な部分まで辿り着く前に、手縫いだけで作品づくりを完結させようとしてしまう傾向があるとおもいます。手縫いにこだわるがゆえに、という意味です。
一方、ミシンでつくることを考える人は、ミシンも漉きも技術のひとつと考えた上で、手縫いという技術を選択するという傾向があるとおもいます。
ミシンで縫っていた部分を手縫いに置き換えるという発想になるので、そのあたりを考えると、手縫いだけにこだわるのも技術の幅という点で全く違うレベルでの制作になるとおもいます。
もちろん、レザークラフトの導入部分における手縫いの技術は非常に重要なものなので、勉強していただくことはやぶさかではありません。
しかし、手縫いだけにこだわるのではなく、ミシンや漉きの勉強も同時に学んでいただき、全部の工程を体験として、自らの技術として身につけていただいた中から、技術のひとつとして手縫いをチョイスするという発想に至ったクラフターは「技術の底力」が段違いだとおもいますよ。ミシンも使えるし、手縫いもいけるというね。
■革をはじめたきっかけ
大学卒業後、進路として考えていた職種は今とは違う分野でした。ふと、これから何をしていいかわからなくなっていたときに、革造形作家の本池さん【注:本池秀夫 氏、レザーアーティスト、革人形・革造形作家】から「ウチにおいでよ」とお誘いいただき、それから1年間彼のもとで学びました。またその翌年1年間は、本池さんのお知り合いの方のところにもお世話になりました。
都合2年間、彼らの元で学んだ後に独立しました。それ以来、独学で工夫を重ねて今に至ります。だから私には正統派の革カバン職人の元で修行したというような経歴はありません。しかしそれ自体が、私の強みになっています。
つまりそれは、他の誰とも違うということと、柔軟さという言葉に置き換えられるとおもいます。本池さんはもともと弟子を取らない人でしたので、お誘いいただけたことは非常に光栄でした。
本池さんからは技術的なことはもちろん、世界観の見せ方やアピールの仕方を学びました。材料の仕入れから、販売先までいろいろと教えていただきましたね。
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